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少なくとも、わたしの頭にしがみついているバクくんのことは見えていないみたい。幼児を頭の上にのせた女子が教室に入って来たら、騒然となるもんね。やっぱり、バクくんはふつうの人には見えないんだ。
それはつまり、わたしがふつうの子ではない、ということにもなるんだけれど……。
夢想力だっけ? わたしは、その夢の世界で活動する力が強いから、夢の住人であるバクくんの姿が見えるのかな?
「…………なんだろう、さっきから四方八方から視線を感じるような……?」
机に顔をつっぷしていたわたしは、顔をあげて、周囲をきょろきょろと見回した。
すると、わたしの席のすぐ近くにいた女子2人と、目が合った。
バッ! バッ!
しかし、2人は素早く目をそらした!
次に、黒板の近くにいた男子3人と、目が合った。
バッ! バッ! バッ!
しかし、3人は不自然に目をそらした!
さらに、窓際にいた女子2人、男子2人のグループと、目が合った。
バッ! バッ! バッ! バッ!
しかし、4人はいっせいに目をそらし、外の景色をながめているふりをはじめた! 息ピッタリだ!
な、なに……? わたし、もしかして、さけられてるの?
な、なんでだろう? やっぱり、学校をサボっていた不良だと思われてるのかな?
「は~い、朝のショートホームルームをはじめま~す! 席にすわって~!」
わたしの不安が限界突破してそろそろストレスで毛がぬけはじめるかもと思ったとき、教室に若い女の先生が入って来て、元気な声でそう言った。一度、病院にお見舞いに来てくれたことがあるから、知ってる。担任の望月先生だ。
生徒たちは、みんな、「は~い!」と返事しながら自分の席にすわる。
ホッ……。
わたしは、安堵のため息をもらした。
みんなからじろじろ見られているのに、目が合ったら視線をそらされる、罰ゲームみたいに気まずい空気からようやく逃れることができた……。
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