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「ああ、そうだ。いま、オレさまが助けてやる」
な、なぁ~んだぁ~! よかったぁ~!
よくよく考えてみたら、あんなにもでかい注射器が現実にあるはずがないもんね。
それに、病弱で体力がさっぱりなわたしが、こんなにも速く、しかも長い時間走っていられるはずがなかったんだよぉ~。……自分で言っておいて、ちょっとへこむけど。
「ねえ、『オレさま』さん! あなたもわたしの夢の中の登場人物なんでしょ? 助けてくれるのなら、ちゃっちゃとあの注射器をやっつけて! お願い!」
「オレさまの名前は、『オレさま』じゃねえ! オレさまの名前は……」
「なんでもいいから、早く助けてよぉー! ヘルプ・ミー!」
「名乗らせろよ! チッ、まあいいや……。いますぐ、おまえの悪夢をオレさまが食べてやる」
「え? 悪夢を食べる?」
おどろいたわたしは、頭上でぷかぷか浮いている「オレさま」さんを見上げた。
「オレさま」さんは、体ぜんたいから金色のまぶしいオーラをはなっていて、その姿はよく見えない。声は、男の子っぽいけれど……。
「こいつは、悪夢使いの夢幻鬼ヒガンのしわざだな! このオレさまがあらわれたからには、悪夢なんてひと飲みでごっくんしてやるぜ!!」
そう啖呵をきった「オレさま」さんは、ふわりと地面に舞いおりて、わたしをかばうように、巨大注射器たちの前に立ちはだかった。
「さあ、来い! 今夜はごちそうだぜ!」
「オレさま」さんは、せまり来る注射器たちに人差し指でクイクイと手まねきすると、
ひゅぅーーーっ!!
と、大きく息を吸いこみ始めた。
え? え? な、なにやってんの……?
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