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「『オレさま』さん、助けてくれてありがとう! ねえ、ねえ、そのピカピカやめて、顔を見せてよぉ~!」
「だ・か・ら! オレさまの名前は、『オレさま』じゃねえ! 何なんだよ、おまえ!」
わたしが恋する乙女のように目をキラキラ輝かせながらせまると、『オレさま』さんはなぜかおびえたような声でそう言い、一歩、二歩とあとずさった。
「え? なんで逃げるの?」
「目がギラギラしていて恐いんだよ! 邪悪なオーラを感じる! オレさまのことを取って食うつもりか!?」
「そんなわけないじゃん! 恋にあこがれる乙女にむかって失礼な!」
プンスカ怒りながらわたしが一歩近づくと、「オレさま」さんは三歩あとずさる。
も、もう~! 何なのよぉ~、傷つく~! わたしはただオレさま系イケメンの顔をおがみたいだけなのにぃ~!
「た、助けてやったんだし、これでさよならだ! じゃあな!」
ついに、「オレさま」さんは飛びあがり、空中に逃げてしまった。
「あっ! ま、待ってよぉ! ……よ~し! だったら、わたしも飛んでやるんだから!」
ここはわたしの夢の中なんでしょ?
何でもありの夢の中だったら、わたしも飛べるはず!
そう考えたわたしは、蝶が空を舞っている光景をイメージして、
(蝶の羽よ、わたしの背中に生えろ!)
と、念じてみた。すると……。
「やったぁ~! 蝶の羽が生えたぁ~!」
「う、ウソだろ!? 人間のくせに、なんていう夢想力の強さだ!」
わたしは、アクアマリンの輝きをはなつ蝶の羽を優雅にはためかせ、「オレさま」さんを追いかける。
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