いい天気

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家に財布忘れた。 友達は全員帰ってしまった。 お金を借りられる人もいないからバスに乗れない… 歩くしかない… 下校時刻が迫っていたので、私は鞄を掴み、 下駄箱へ向かった。 雨降ってる… しかも結構激しい… 傘は持ってるけど… 最悪…… 私は嫌々傘を広げて歩き始めた。 雨が傘を上からざばざばと押してくる。 後ろから自転車をこぐ音がする。 さっと道の端に寄った。 … もうすぐ卒業式。 先輩は高校生になってしまう。 中高一貫校だから同じ校舎にいるものの… …私の好きなあの人も もっと遠い存在になってしまうのか。 後ろから自転車を漕ぐ音がする。 私はまたかと思いながらも道の端に寄った。 「あっ、一ノ瀬さん…」 名前を呼ばれ振り返ると先輩がいた。 「せ、先輩っ!?お、お疲れ様です!」 先輩は自転車から降りニコッとして私の隣に並んだ。 「歩き?」 「あ、はい!」 「こんなに雨降ってるのに…?」 「バスで帰ろうと思ってたんですけど、お金忘れちゃって…」 先輩のこと考えてたときにちょうど会うなんて… 心臓がバクバクだ。 「どこまで行くん?」 「えっと、駅まで…です」 変な事言ってないよね、大丈夫。 「そっかー、じゃあ、送ってくわ」 「え?」 先輩は私の顔を見て、ん?とでも言うように首を傾げた。 「あ、ありがとうございます!」 先輩と一緒に帰るなんて…! そのあと沈黙が続いてしまうときもあったが、 先輩が気を遣って話してくれた。優しい…。 もうすぐ駅だ。 あぁ、もうちょっとでこの幸せな時間が終わってしまう。 嫌だなぁ。 ずっと駅に着かなかったらいいのになぁ。 心の中で恋愛の神様に土下座でお願いしたけど 駅に着いてしまった。 自分で適当に考えた神様だし仕方ない…なんてふざけたことを考えてるときに… 「あのっ、一ノ瀬さん」 「は、はいっ!」 「あ、の…言いたいことがあるんやけど…」 「…なんですか…?」 「………」 「……?」 「……なんやったっけ?忘れた笑」 先輩は少し照れたように笑っている。 「なんですか笑」 「笑笑」 「あの…私も先輩に言いたいことがあります」 「なに?」 「駅までありがとうございました!楽しかったし…、先輩とたくさん話せて嬉しかった…です…!」 「僕も楽しかったよ!」 「じゃあまた明日!」 「はい!お疲れ様です!」 雨はまだまだ降り続いている。 だけど、私の心には大きな虹が出ている。
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