Code.1-12;死闘

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「ッ、ぁ……!」 「いい具合に死ぬ寸前だな。約束だからそろそろ種明かししてやろうか?」  必死の思いで喘ぐエマヌエルに、男は視線を落として虚ろな笑い声を立てる。 「お前が殺したのは『俺』じゃない。あの時お前に殺されたのは、俺の兄貴だ」  男曰くの種明かしは、耳には入るものの、意味を咀嚼して理解する余裕などない。  出血の所為で、視界は最悪に霞んでいる。  男の表情は読めなかったが、声から笑いが消えているのだけは理解できた。 「あの日、お前が殺したのは俺の双子の兄だ。ウォーレン=パターソン博士を知っているだろう?」  科学者一人ひとりの顔と名など、はっきり言って覚えていない。記憶力は悪い方ではないが、ノイマン研究所は、そのものが巨大組織だ。  報復に際しては、裏プロジェクトに携わった者の名簿を探し出して、顔写真と名前を照合し、端から殺して回っていた。  だから、こんな風に『誰それを覚えているか』と問われても、他の人物なら分からないだろう。  けれど、『あの日』殺した相手の顔は覚えていた。最初に彼らを選んだのに理由はない。  制御装置を外された時、たまたま手近にいたから。  手術に携わる人物なら、確実に裏プロジェクトに関わっているから。ただそれだけのことだった。  顔を覚えていたのも、特別強烈な印象があった訳ではない。爆破直前、一番最初に顔を見て、それが比較的新しい記憶だったに過ぎない。  しかし、ウォーレン=パターソンという名にも聞き覚えがあった。それも、ごく最近耳にした名だ。一体何処で―― 「うあっ……!」  だが、記憶を手繰る作業は、男が傷口へ食い込ませた踵を更に沈める行為に、あっさりと中断する。 「俺達は一卵性の双子だからな。見間違えるのも無理はないさ。多少は驚いて貰えたみたいだが」  パシン、という音と共に、男の左手に青白い光が疾走る。 「それくらいじゃ、あいつを奪われた恨みは消えない」 「ッ、……けん、なよ」 「あ?」  絞り出した声に、男が僅かに苛立ったような声音で問い返す。
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