Code.1-2;焔鎖《えんさ》

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Code.1-2;焔鎖《えんさ》

 後ろ姿が映ったカメラと、そのカメラの映し出す場所を確認したヴァルカは、踵を返した。ドアを蹴破る勢いで、監視室を飛び出す。  この研究所は、タガが外れる程敷地面積がある。従って、今いた一室だけで監視できる範囲は、程度が知れている。そこのカメラに映る、ということは、相手はそう遠くにはいない。 (確か……あの辺は、地下一階部分)  今いる場所からなら、半径五百メートル圏内だ。  ヴァルカは、気配と足音を殺し、周囲の気配は慎重に探りながら、先日の爆破を免れた通路を駆ける。  周囲は明かりもなく、地下階であるが故に、外から漏れ入って来る明かりもないので真っ暗闇に近い。  だが、ヴァルカの夜目の利き具合は半端ではなく、暗がりでも明かりを必要としなかった。見えるのだから、探す相手を警戒させるような明かりは寧ろ持たない方がいい。  無造作に泳がせた視線の先に、地上へ出る為の階段が映る。ヴァルカがいる場所から見えたのは、踊り場に通じる階段全体と、そこへの最後の段を上ろうとする片足だった。  目を見開き、反射で足を止める。意図せず床を擦った靴音で、向こうもこちらに気付いたのだろう。見えている足が、ビデオの停止ボタンを押すように、一瞬動きを止めた。  けれど、直後には素早く、その足は視界から消える。 「待っ……!」  追い縋るように駆け出す。だが、相手の姿を視界に捉えるより早く、爆音が轟いた。 「!」  音に遅れること一拍、爆風がヴァルカの行く手を遮った。  反射的に腕を交差させて頭を庇い、しゃがみ込む。辺りが元通り静まり返ってからそろりと立ち上がった。その時には、既に相手の姿は、影も形も残っていなかった。 ***  辺りはすっかり夜の(とばり)が降り、群青色の闇が落ちている。  街灯がポツポツと(とも)り始めた人気(ひとけ)のない住宅街を、男が一人歩いていた。  くたくたになった白衣の上に、コートを羽織っている。年の頃は、四十代半ばだろうか。白衣と同様にくたびれた感のあるブロンドが、頭の上で男の歩に合わせて揺れている。
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