Code.1-3;ノース・エンドの衝突【前編】

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Code.1-3;ノース・エンドの衝突【前編】

 研究所敷地内の最北端に、研究所から出た化学廃棄物を処理する為の施設がある。その更に片隅、何故か廃車が数台放置されている一角で、エマヌエルは廃車の間に座り込み、小さなノート型パソコンをいじっていた。  事故後、すぐに確保した地下の隠れ場所は、一週間程前に放棄していた。  ちょうどその頃に殺した男――ウェルズに指摘されるまでもなく、どこかの捜査団体が、毎日のように何か嗅ぎ回っているのは知っている。彼は、確かCUIOとか言っていた。  それが、どんな組織なのかまでは、エマヌエルには分からない。十歳にして人身売買組織に売られ、世間一般の情報からは隔絶されて育った所為だ。  けれど、改造もされていない普通の人間に何が出来ると、無意識に侮っていたのも事実だ。  その『侮り』が『油断』として自覚出来たのは、一週間前の夜半のことだった。  いつものように隠れ場所から出たエマヌエルを、誰かが追って来たのだ。床を擦る足音を耳に捉えるその時まで、気配も読めなかった。  どうにか振り切ったが、一度見付かった隠れ場所を使用し続けるのは危険以外の何者でもない。あの日以降は、新たに見付けた隠れ場所である研究所付属の危険物廃棄所で寝起きしていた。  廃棄所の面積は、およそ二平方キロメートル。  フロリアンの地がノイマンの私有地になる以前、ノース・エンド・シティのゴミ集積及び処理場として使用していた施設を、そのまま流用したものらしい。  ゴミ処理場だった頃の名残とばかりに、打ち捨てられたままになっていた廃車の中が、今はエマヌエルの仮住まいだった。  研究所の研究内容が内容なだけに、そこへ廃棄されるのは使い捨ての注射器や期限切れの薬品ばかりではない。かなり危ないウィルスの種なども放置されている。  普段は、定期的に焼却炉で処理が行われていたらしい。  が、研究所が半ば崩壊した今は、普段管理に当たっていた人員も爆発『事故』の後処理に追われているようだ。その為、出入り口付近にある管理室は現在無人で、忍び込むのに苦労は要らなかった。
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