253人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
そうちゃんはよくできた人で、なんでもそつなくこなすタイプだ。
だからこれは、お世辞なのはもちろんだし、それからそれから、社交辞令というか、一種の決まり文句、常套句の類いであるのももちろんのこと。
……だから、深い意味はない。
そうちゃんは多分、何かしら褒めた方が円滑に進むと判断しただけだ。
他意はない。
きっと、本心でもない。
それでも、悩んだぶんだけ頬が緩みそうになる。
ちょっとだけ悔しくて嬉しい。
……くそう。
行こう、とさらっと歩き出したそうちゃんを早足で追いかける。
背中に追いついて隣に並ぶと、そうちゃんはわたしをまじまじと見つめて、訝しげに瞬きをした。
「…………ん?」
こてり、不思議そうに傾げられた首。
伏せられたまぶた。
影を落とす長いまつげ。
思案げな、眉。
「ん? 何?」
「いや、なんか……」
「え、何?」
「んー……」
なに。なんだ。なんなんだ。
じーっと凝視されると居心地悪いんだよ、そうちゃん……!
立ちどまるそうちゃんに合わせて足をとめたものの、隣から突き刺さる視線に目が泳ぐ。
うんうん唸っていたそうちゃんは、ああ、と急にこぼしてまばたきをして。
「そっか。目線が違うのか」
ぽふ、とのせられた大きな手のひらが、二回頭の上を往復した。
最初のコメントを投稿しよう!