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行こう、と再び促されて、手をつないだまま階段を下りて歩き出す。
そうちゃんは転ばないようにちゃんと支えてくれている。
そういえば、まだ出発もしていなかった。あんまり必死ですっかり忘れてたけど。
でもまあ、時間をかけたぶんの成果は得られたからよしとしよう、うん。
ちゃんと手をつなぎたいと言えたし、ちゃんと手をつなげたし、おまけにそうちゃんから嫌じゃないと言ってもらえさえした。
いろいろ焦ってちょっぴり泣きそうになったのは封印だ。
……だって嫌われたかと思ったんだよ。
でも今は元気に歩いているからいい。いいったらいい。
「佐藤さん」
「ん?」
明るい気分で颯爽と歩いていると、そうちゃんはこちらを見て呼びかけた。
振り仰いだわたしと目が合ったところで、ぱっと顔をそらす。
え、あれ、わたし今呼ばれたはず。
そうちゃんの目を追いかけるわたしの視線から逃れるように、完全に横を向いてしまった。
「なんか誤解してそうだから、もう一回言うけど」
「ん? うん」
よく分からなくてまばたきをする。
なんだろう。なんでこっちを見てくれないんだろう。
というか。
……そうちゃん、耳赤くない?
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