もっと一緒にいたいのに。

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「失礼いたします。こちらメニューでございます」 薄い大ぶりの冊子一つと、縦長のラミネート加工されたものが二つ差し出される。 縦長の方はそれぞれ季節のメニューと赤で書いてあって、ケーキが数種類と、パスタとキッシュが数種類載っている。 「ご注文がお決まりの際にお伺いいたします。こちらのベルを鳴らしてお呼びくださいませ」 お水を置いてからの綺麗なお辞儀に二人でぺこっと頭を下げると、美人な店員さんは和やかに微笑んで、もう一回綺麗なお辞儀をしてくれた。 わたしが見やすい向きにしてメニューを開いてくれたそうちゃんが、わきから一緒に覗き込む。 「見た?」 「見た」 「めくっていい?」 「ん」 机の真ん中に顔を寄せ合って、何度もページをめくったり戻したりしながら、ゆっくり選ぶ。 パスタとかグラタンとかドリアとか、たくさんあると迷うよね。 「何食べる?」 「ケーキセットかな」 「これ?」 「うん」 指差しの確認に頷いた。 青字で大きく書かれたケーキセットは、キッシュまたはパスタまたはフレンチトーストと、お好きなケーキと、飲み物のセット。 キッシュは一切れが結構大きめで、チーズが入っていたり野菜がたっぷりだったり。 パスタはトマトかバジルか。 フレンチトーストは、大皿の半径ほどの大きなフランスパンのものが二つ。メイプルシロップとバターとハチミツをお好みでどうぞ、らしい。 「佐藤さんはキッシュ? パスタ? フレンチトースト?」 「キッシュにする」 ん、と頷いたそうちゃんはまだ悩んでいる。 視線をたどったら、キッシュとパスタで迷っているらしい。 「キッシュ半分こする?」 「する」 「チーズ多めの方でいい?」 「ん」 即答に笑って、じゃあパスタ半分こね、と言ったら実に神妙に頷いたので、もう少し笑った。
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