もっと一緒にいたいのに。

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「トマト大丈夫だったよな? バジルの方がいい?」 「大丈夫だよ。ケーキは決めた?」 んー、と若干唇を尖らせながらメニューをめくって、視線をケーキのページで行ったり来たりさせている。 見開きで九つと、もう一ページめくって四つ、それから別紙で季節のケーキが二つあるから、ケーキは全部で十五種類ある。 美味しい果物のケーキが売りのお店だけあって、かなり数が多い。 「わたしイチジクにする」 わたしはイチジクを指差し。 「俺マスカット」 そうちゃんはマスカットを指差し。 「「一口、」」 声が揃ったことに驚いて、きゅ、とお互い口を結んだ。 ええ、と。 メニューからそうっと視線を上げて、顔を見合わせる。 「あー……えーっと、佐藤さん、一口くれる?」 「うん、一口どうぞ。佐藤くんも一口くれる?」 「ん」 「ん」 そうちゃんは顎をすとんと落とすような頷き方をする。 わたしも同じ動きで頷いて、付け足した。 「マスカット一粒ちょうだい」 「一つでも二つでもどうぞ」 やった! 二粒もらおう。 「ありがと。イチジク一切れあげるね」 「ん、ありがと」 なんだか掛け合いがすごく幼なじみで、嬉しくなる。 へらりと頬を緩めたわたしを見て、そうちゃんも優しく微笑んだ。
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