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それぞれ決まったところで、ちりんとベルを鳴らす。
お待たせいたしました、と来てくれた店員さんに注文して、復唱して確認してくれるのに頷いて、ほっと一息ついてから、なんとはなしにお店を見回した。
綺麗な色の絵とか、窓の外の人混みとかをわくわくしながら見て、ぐるっと一周したところでばっちり目が合って。
まばたきを一つ。
「……ど、どうも?」
思わずお辞儀なんかしちゃったわたしに、そうちゃんもつられて軽く頭を下げて、首を傾げた。
「……どうもって何」
「分かんない」
「なんだそれ」
縮こまったわたしに、ふは、と破顔して、そうちゃんが噴き出す。
う。
そうちゃんのばか。あほ。まぬけ。
ずるいよ。反則だよ。
珍しいくらいの笑顔であんまりおかしそうに笑うから、心臓がうるさいじゃないか。
恨めしく固まったわたしの、じわりと染まる赤さにそうちゃんも固まった。
「…………」
「…………」
何か言わなくちゃ。何か。
沈黙に焦って、とりあえず思いついたことを言ってみる。
「なんか、あれだね」
「どれだよ」
えっと。
言い淀んで視線を下げる。
「……あれだよ」
いつもそうちゃんの横顔ばかり見ているから。
「…………なんか、照れるなーって、思って」
いつもそうちゃんはオレンジ色の夕焼けに染まっているから。
こんな、明るい時間帯、しかも休日に正面にいることなんてあんまりないから。
照れる。
……照れる。
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