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そうちゃん、今日はよく笑うし。それになんか、なんか、すっごくばっちり目が合うんだよ。
ほんとに真正面なんだもん。
まっすぐ前を向けないというか、心臓がうるさいというか。
「……佐藤くんは、照れないの?」
そうっと正面をうかがったわたしに、そうちゃんはぐっと詰まって唇を引き結んだ。
口をへの字にして、忙しなく視線を泳がせている。
「……いや、あの」
「う、うん」
「えーと」
「うん」
「……えーと」
「……うん」
口を開け閉めするばかりで、なかなか意味がある言葉を言ってくれない。
わたし、だけ?
もしかして、そうちゃんは違うのかな。
なぜかわたしは、そうちゃんもわたしと同じように照れているのだと思い込んでいた。
二人して照れているのだと、照れるような関係なのだと──わたしはそうちゃんに、女子として見てもらえているのだと、本当になぜか信じ込んでいた。
そんなこと分からないのに。わたしたちはただの幼なじみなのに。
『デートだろ。俺と佐藤さんが一緒に出かけたら』
思い出した言葉に、どんどん不安になってくる。
そうだった、そうちゃんとわたしのデートの定義は違うんだった。
じゃあ。
じゃあ。
もしかして、本当に本当にわたしだけ?
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