すぐそばにいてよ。

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……それが今はこれだもん。 苦く現状を振り返る。 呼びかけは最低限、主語省略は当たり前、愛称なんてもっての外。 ねえ、おい、なあ、ちょっと。 同じ学校に通っているけど、文理が違うからか、なんとなく避けているからか、校内では滅多に会わない。 家がお隣で登下校の通路も一緒なのに、朝はわざわざ時間をずらす。 ……でも、帰りは絶対一緒に帰る。 子どもっぽくて気にしているんだけど、わたしが暗いの苦手だから。 そうちゃんは初めてわたしの申告を聞いたとき、馬鹿にして笑ったりしなかった。 どんなに喧嘩しても、どんなに疎遠になっても、どんなに全然話さなくなっても。 わたしが帰るとき、「行くよ」って隣に並ぶ。 もしくは、「帰ろ」って隣に並ぶと、「ん」とか「遅い」とか言いながら一緒に帰ってくれる。 どんなに待たせてしまっても、そうちゃんは一度もわたしを置いて帰ったことがなかった。 学年が変わっても、環境が変わっても、好みのものが変わっても、お互いに知らない知り合いがそれぞれ増えていっても、それだけは小さい頃から変わらなかった。 そしてわたしは、小さい頃から、そういうそうちゃんが好きだった。 ねえ、そうちゃん。 いつか、そうちゃんって呼べたら、ずっと潜めたままの初恋の続きがしたいよ。
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