9.YOU

18/21
444人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
動揺の余り、 私が軽く上半身を後ろに倒したので 芳と光正が見つめ合うカタチに。 本当に対称的な2人だな。 相手を直視してハキハキ喋る芳と、 少し自信無さげに視線を逸らす光正。 「じゃあ井崎くんは雅が傷つけられても 構わないと言うのかい?」 「そんなの構うに決まってるでしょ?!」 『だったら…』という光正の話を遮り、 芳は身を乗り出して話を続けようとする。 しかし、身を乗り出し過ぎて、 私の鼻先3cmの位置にその横顔が接近。 上半身を更に後ろに倒そうとした私は、 椅子からズリ落ちそうになり。 それを芳が素早く左腕で支え、 軽々と椅子に座り直させたかと思うと そのまま何ごとも無かったかのように 淡々と話し続けた。 「隠すって、期限はいつまでですか? まさか無期限ってワケでも無いでしょ? そもそも内緒にするって、 どういうことか分かってます? 社内だけじゃ済まなくて、 社外でも恋人らしいことが出来なくなる。 ウチの社員に見つかるような店では 食事が出来ないだろうし、 映画なんかも無理だろうな」 光正は下唇を噛み締め、 ゆっくりと口を開いた。 「…そ…れは、結婚までかなあ。 俺、雅とはそこまで考えてるし」 「へえ、それはスゴイですね。 じゃあ、結婚さえしてしまえば、 雅が嫌がらせされないとでも?」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!