愛惜のはじまり

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「ね、佐竹。さっきから何ヘソ曲げてんのよ」 祈るように、彼の顔を覗き込む。 「だって、さ……。滅っっ茶苦茶名残惜しいって思ってんのは、さ。俺だけかよ……って、思ったら……なんか、悔しくて」 その言葉を投げ捨てて、まるで逃げるように新しい席へと向かう彼。 唇を尖らせながらボソボソと言った彼のその言葉に。 ダメだ……。 私の、大好きが溢れ出ちゃう。 「佐竹っ、待って!佐竹。あ、あの……ね、実は、その……」 しどろもどろの私に足を止めて、じっと待つ彼。 私は恥ずかしくて目も合わせられない。 居心地悪く指先をいじる。 「なんて言うか……その」 でも、もう少しだけ待って。 「本当は、私も……」 『私も凄く、名残惜しい』 そう言葉にするまで、あと二秒。 了
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