愛惜のはじまり

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今まであまりそういうものに興味が無かったから気にならなかったけれど、好きな人と席が隣というこの状況の破壊力。 ……半端ない。 佐竹は成績が良い割には忘れ物が多く、よく教科書を忘れてきていた。 その度に「悪い野々川教科書見して」と言っては当たり前のように私の机に自分の机をくっつけてくる。 その時につい肘がぶつかったりするのよ! 分かる? 好きな人と肘がぶつかる度に私は口から心臓が飛び出すのよ!? 自分の右半分だけが緊張したまんま固まる。 「なんか、今日暑いよな」 そう言ってノートで扇ぐ度に、彼の服に纏った柔軟剤のフレッシュグリーンの香りが私の鼻腔をくすぐるの! 教科書覗き込めば彼も頭を近づけてきて、たまにぶつかったりなんかするんだから!! その度に襲ってくる動悸。 もうダメ。 私の身がもたない。 好きな人は少し離れたところから眺めるに限る、と落ちてきた髪の毛を耳にかけ直すこともせずに、その毛束に隠れて耳まで赤く染めながら彼の隣で思っていた。
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