愛惜のはじまり

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彼との別れは突然だった。 クラス替えから二ヶ月が経った頃。 中間試験が戻ってき始めた頃だった。 「おい、今日は席替えするぞ」 担任の何気ない思い付きだった。 神様、どうか……。 困った時だけ神頼みしたって、言うこと聞いてくれないのは分かってる。 でも、せめて彼と近くの席にして下さい! ギュッと目を瞑ってクジを引いた。 黒板に書かれた自分の席を番号を見ながら探す。 「野々川、どこだった?」 「ここ。隣の席」 佐竹が元の席に戻った私に身を乗り出して尋ねてきた。 私は今の席の一つ左隣へと移った場所。 窓側の一番後ろの先だ。 「佐竹は?」 尋ねてきた佐竹に恐る恐る聞き返す。 「あー、俺……廊下側の一番前」 「……そっか。じゃあ、離れ離れだね」 神様の無情を呪う。 離れ離れの席。 なんだか、それだけで泣きそうになる。 それを隠すように明るく言ったつもりだった。 「今までお世話になりました。もう教科書見せてあげられないから忘れちゃダメだよ」 もし、隣が女の子なら、きっと私その子に嫉妬しちゃいそう。
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