愛惜のはじまり

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よりによって、対角線状に一番端と端。 こんなに席が離れてしまえば、もう接点も無さそう……。 人懐っこい彼の事だ。 私以外の女友達だってあっという間に作ってしまうんだろうな。 もしかしたら、もう……こんな風に何気ないやりとりだってこれが最後なのかもしれない。 それが、残念でならなかった。 「じゃあ、新しい席に移動な」 全員がくじ引きしたことを確認して担任が声を張る。 それを合図にガタガタと椅子が鳴る。 先程から、急に無口になった佐竹。 ねえ、せめて最後は笑顔見せて……。 「じゃあね。バイバイ」 泣きそうなのを堪えて、努めて明るく彼に笑い掛けた。 「え?あ、ああ」 それなのに、とても素っ気ない。 さっさと立ち上がる彼。 場所が変われば私との事なんてどうでも良いのかと切なさが心をざわつかせる。
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