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結 樹木桂
勇者討伐令が出て半日。勇者は、古新聞で顔を隠しながら、コソコソと街をさまよっていた。
「ちょ、あれ勇者じゃね!?」
パリピっぽい若者達が近づいてくる。
勇者は咄嗟に変化の術を使い桃太郎に化けた。
「わ、私はごく普通の桃太郎ですよ??」
パリピは残念そうに吐き捨てる。
「チッ。ただの桃太郎かよ。行こ行こ。」
胸をなでおろす勇者。だが、いつまでも逃げていては拉致があかない。
(そうだ、あいつなら!)
勇者は、ある男を訪ねることにした。
やってきたのは魔王城。長年の宿敵だ。
勇者は、魔王城にしのびこみ、なんとか魔王に会うことができた。
訳を聞いた魔王はニヤリと笑う。
「なら、こうしようじゃないか。」
数日後。勇者は、突然皆の前に姿を現した。
叫ぶ群衆に呼びかける勇者。
「見てくれ!!魔王と戦って、腕を取ってきた!だがまだ奴は生きているし、戦いは始まったばかり!みんな、俺なんか討伐してる場合じゃない!」
群衆は静まり返る。そして、すぐに沸き立った。
やっぱり勇者様はすごいと。
こうして勇者は再び勇者となった。
ところでこれは噂だが、魔王の顔はなぜか桃太郎にとても似ていたそうな。
めでたし、めでたし。
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