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「あ、あのっこのタオル」
佑奈はすかさず持っていた袋からタオルを取り出す。
「あれ?このタオル……」
「この前はありがとうございました!凄く助かりました」
「あー!あの時の子か!あの後風邪とか大丈夫だった?」
「何?知り合い?」
「いや、この前の大雨の時にさ~─」
志波はちゃんと覚えていた。
「お陰様で全然平気でした」
「佑奈が返したいけどどうすればいいか分からないって悩んでてさー。ただ名前見たら志波だったからお前かよって思った」
「いやー俺もまさかあの時の子が同い年だったなんて……てっきり中学か高校生くらいかと」
志波は笑いながら言った。
(ちゅっ中学……)
童顔な顔を気にしてる佑奈にはグサッとくる一言だった。
「こらこらっ佑奈はこう見えて立派な大学生だぞ」
ただ、いつもファンの人達に囲まれていて遠くで見るしか出来なかった志波が目の前で笑いながら話していることが信じられなかった。
(あの時は敬語で話してたけど、砕けた感じで話してくれるの嬉しい……っ)
「いやー……本当に瑞希様様だよ」
佑奈は志波の連絡先が入ったスマホを掲げて拝んでいた。
「佑奈大袈裟すぎ」
『せっかくだし今度またこのメンバーで集まろうぜ』
志波の言葉がずっと脳内でリピートされている。
「だって、ちょっとした学内のアイドル的存在だよ!?こんな話す機会が出来るなんて思わないじゃん」
「あははっでもびっくりしたなぁ」
「んー?」
「いや、実は昔……私アキのことが好きだったんだよ」
瑞希は照れくさそうに言った。
「えー!?志波さんじゃなくて椎名さんの息子さん?」
「息子さんって言われるのめちゃくちゃ違和感あるんだけど……息子さんの方ね。まぁ、とっくの昔に振られてるんだけどね」
「えっしかも告白したの?そして振られたの!?」
「ちょっと、声が大きいわよー」
とても意外だった。
こんなに美人で気さくな瑞希が振られることが全く想像がつかない。
現に彼女はこの3ヶ月で既に4人に告白されている。
「告白かぁ……したこともされたこともないよぉ。東京の人ってみんな大人なんだねぇ」
「そっちに感心してるの?」
「そしてこんなに美人な瑞希を振っちゃう男がいることにすっごく驚いてる。あの人贅沢すぎ!」
「よね!もっと言ってやって!!」
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