第1話 ときめき日和

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「おー!2人ともこっちこっちー!」 校門の前でブンブンと腕を振る昭。 そしてその隣には志波の姿があった。 「え、志波くん!?」 「あれ、言ってなかったっけ?一応志波も同じサークルなんだぜ。ほぼ幽霊部員だけど」 「仕方ねぇだろ。陸上部の練習で忙しいんだよ」 (えぇー!?そんなの聞いてないというか……そもそも心の準備が出来てないよーっ) 「佑奈ラッキーじゃん」 瑞希が小声で嬉しそうに言った。 「いやっそんないきなり……どうしよ~!」 「なーに2人でこそこそ話してんだよ。早く行くぞ」 昭が先導して歩き始める。 瑞希はそれに早足でついて行き、昭の隣に並んだ。 「本当にあんた達ってどこでも一緒なのねぇ」 「ま、俺と志波は運命の赤い糸で結ばれてるからな」 「椎名……気持ち悪いこと言うなよ」 まったくとため息を吐く志波。 瑞希が昭の隣に行ったことにより、自然と佑奈は志波の隣を歩く形になった。 (わわわっ何か!何か話さないと!!!) しかしいきなりのことで対応出来ず、会話が出てこない。 「…………ぷっくくっ」 「え?」 いきなりの笑い声に佑奈はきょとんとした表情で志波を見上げた。 「いやっごめんいきなり笑って。佑奈ちゃんっていっつもオドオドしてて可愛いなぁって思って」 練習を何度か見に行った時の志波の表情はいつも真剣そのもので、キリッとした顔をしていた。 しかし、今は普段からは想像がつかないような可愛らしい笑顔だった。 (いや、こっちが普段の表情なのか) 不意打ちの笑顔に心打たれて、佑奈の顔は益々赤くなる。 「あー!ちょっと志波!!うちの佑奈にいったい何をしたのよー!!」 「えっいや!そんな何もしてないって!!な、なぁ?」 佑奈は必死に首を縦に振る。 瑞希はにやにやした表情で2人を見ていた。 「なんかさ、あの2人良さそうじゃない?」 ぐいっと昭の腕を引っ張り少し早足で歩きながら、瑞希は昭に耳打ちをした。 「あー……やっぱり佑奈ちゃんって志波のこと?」 「たぶんね。本人はまだ気になるけど……って程度にしか言ってなかったけど、あの様子なら」 「ふーん。ま、いいんじゃねーの?」 昭はそう言って少し離れた2人の様子をちらっと見た。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加