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 鬱蒼とした森の中。月の光が枝の隙間からわずかに差し込む中、感じられるのは、闇を蠢く人外の気配のみ。  ふこー、ふこー。くぐもった人の吐息が聞こえる。だが、それは人という種でありながら人であることをやめた、怪物そのものである。  右手には鉈。左手にはブロンドの髪を真っ赤に染めた、女の生首。身長2メートルを超える、マスクを被った殺人鬼だ。  彼の全身に飛び散った返り血は、左手の女一人のものではない。それは無辜な若者達の命を、己の殺人衝動の赴くままに、惨たらしく奪ってきた証だった。  殺人鬼は集中して、辺りの気配を探っている。新たな犠牲者を、温かい血飛沫を求めて、再び動き始める。
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