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「あ、お疲れ様です」  長い黒髪を、顔が隠れるように前方に垂らした女がいた。 この場に全くふさわしくない白い和装束は、それでも彼女の冷たく、禍々しい気配にこれ以上ないほど似合っていた。  殺人には彼女を見ると、急に慌てたように、身なりを整え始めた。  マスクの返り血を拭い、服の皺を伸ばす。  そんな殺人鬼の持っている鉈を女は見下ろし、 「凶器はまた、鉈ですか。……貴方は折角『人』の範疇であるのだから、もっと多くの道具を使った方がいいと思います」  と、少しあきれたように言い放つ。    殺人鬼はくうん、と切ない声を上げ、肩を落とす。女はそんな彼の元まで近づき、 「ごめんなさい、気を落とさないで。 実は、少し羨ましくて。この前、ゾンビさんとも話し合ったのですが、私達のような人外は、殺し方が同じになりやすいのが悩みでして。 殺しのバリエーションが増やしやすい、貴方への嫉妬の念がこもっていたかもしれません」  自嘲気味に呟く女を悲しげに見つめ、殺人鬼は持っていた生首をそっと差し出す。  すると女は苦笑し、 「慰めようとしているのですか?でも私は死体には興味が無くて。私はあくまで、人を呪い殺したい種ですので 」
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