三年後も、四年後も

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「じゃあ、いつになったら付き合ってくれるんだよ? 香子先生」  顔をそむけたまま、小さく息を吐く。 「無理です」 「その返事は聞き飽きた」 「いつになっても無理です」 「彼氏いないくせに」  顔を向け、彼のことを睨みつける。そんな私を面白がるように、にやっと笑う私の教え子。腹が立つ。 「そうね。私に彼氏はいないけど、藤野くんには彼女が大勢いるんでしょうね」  ちょっと意地悪く言ってやる。 「は? 彼女なんかいないって」 「あら、いつも女の子に囲まれてるから、彼女のひとりやふたり、いるのかと思ってたわ」  教室でも、廊下でも、校舎の外でも。女子生徒と一緒にいる彼の姿を、私は何度も見ていたから。  またむっとした顔つきになった彼が、机から降りて私に近づく。 「先生。もしかして妬いてんの?」 「ばっ、そんなわけないでしょ!」 「あ、赤くなった」  私を見下ろすようにして、ははっと笑う彼。コロコロと変わるその表情に、振り回されているのは私のほうだ。 「とにかくさっさと帰りなさい。こんな時間まで残ってる生徒は、あなたくらいよ」  そう言って、一歩踏み出した私の行き先を、彼がふさぐ。 「いつになったら付き合ってくれるか、ちゃんと返事してくれるまで帰らない」 「いい加減にしなさい」 「香子先生」  甘ったるい声でそう呼ばれ、条件反射のように顔を上げる。目の前に立つ彼と視線がぶつかり、あわててまた外を見る。 「俺、三年間ずっと、先生のこと想ってるんだけど?」  知ってる。うんざりするほど、その言葉を聞いてきたから。
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