三年後も、四年後も

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 *** 「お母さん。今日はいい天気だよ。お散歩でもしてみない?」  窓から射し込む春の陽射し。ベッドの上の母が微笑む。 「そうね。少し外へ出てみようかしら。桜も咲いてるみたいだし」  その声に、かすかな痛みが胸の奥を走る。  テレビの画面には、桜の満開を知らせるアナウンサーが、満面の笑みで映っていた。  母と一緒に近所を歩く。その腕を支えて、ゆっくりと。  二年前に大病を患った母は、今、自宅でリハビリを続けている。 「公園の桜が満開ね」  母が空を仰ぐようにして、咲き乱れる桜の花を見つめる。  やわらかく吹く春の風。ふわりと舞う淡い色の花びら。誰もがその木を見上げ、笑顔になっているというのに、私の心はくすぶり続ける。 「ごめんね……香子」  公園の桜を見上げたまま、母が突然つぶやく。 「私の病気のせいで、仕事を辞めさせちゃって……ほんとにごめんね?」 「なに言ってるの? お母さん」  母が倒れたあと、私は母の看病をするため、去年の年度末で高校教師を辞めた。  正直、迷ったことは確かだ。仕事はちょうどやりがいが出てきた頃で、寂しがってくれる生徒もいてくれた。だけどそれは私が決めたこと。
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