2/23
6003人が本棚に入れています
本棚に追加
/302ページ
 あれは一昨年だろうか。千景が大学に入ったばかりだったから一昨年のはずだ。  サークルには入らなかったけれど、ゼミで新入生歓迎会があった。つまり飲み会だ。  千景は当時当然ながら未成年で、でもそんなことはおかまいなしにそれは居酒屋で行われた。高校生の時分から一滴も酒を口にしてことがなかったかというと、そんなことはなくて、やはり誰でも一度は試す機会があるものではないだろうか。  だから千景も自分がアルコールに弱いことは自覚していて、新入生なのだから一口も口にせずに終われないだろうとは思っていたけど、最初の一杯でもうダウンしてしまった。  トイレに籠もりっきりで、楽になったらアルコールのせいか眠くなり、そのままトイレで寝てしまった。友人らがとっくに店を出て二次会の店に移動したことも知らずにいた。  今なら誰かが千景がいないと気づいてくれただろうけど、当時は入学したばかりで親しい者がほとんどいなかった。  はっと目が醒めると開始時刻から三時間は経過していたが、その店は個室トイレが隣にもう一つあったので、一つが立てこもり状態になっていても誰かがこじ開けようとはしなかった。おそらく店員さえ気づいていなかったのだろう。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!