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 そう言われてみれば以前今本にそんなことを言ったような気がする。まさか色恋沙汰でどうこうという話はいくら千景でもすべきでないとわかっていたので、喧嘩して部屋を出た、と言っておいた。 「へへ、戻れた。嬉しい」 「おまえって本当兄貴好きだね。というか同居しててまじで何もねえの? おまえ可愛いツラしてるのにさ。兄貴はホモじゃないから変なことにはならないのか」 「あ、それね、実はまったく逆で…」 「逆って何?」 「話せば長いことながら…」  もごもご言っているとちょうど教授が入室してきたのでそこで会話は終わってしまった。  今本は不可思議そうな顔をしていたけれど、講義が始まるとすぐに真面目にノートを取り始めていた。  どこまで話せばいいのだろうか。今本は信用のおける人間だし、以前ミキらと揉めた時も味方になってくれたからあまり隠し事はしたくない。  でもいくらなんでも義理の兄と恋人になり身体の関係もあるというのは、センセーショナルな告白ではないだろうか。他人の性癖に興味はないと言っていたけれど。  まあ折を見て、今本の反応を窺いながら徐々に明かしていくしかないか。
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