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「俺鍋って聞いてたからすき焼きかと思ったんだけど、ただの寄せ鍋なの。がっかりだよ」  食卓につくなり、航生は落胆したようにぼやく。  その割に普通に小鉢によそってがつがつ食べているのだから、まったく理解できない。 「チカが寄せ鍋がいいと言ったから」 「すき焼きって肉ばっかりじゃん。胸やけするよ」 「おまえなんか色んな具材あったって同じもんばっかり食ってんじゃねえか」 「そんなことないよ。色々食べてるよ」 「白滝ばっかり食ってるだろ。食おうとしたら全然ないんだよ。何で糸コンニャクなの? おまえの脳みそに似てるからなの?」  うるさいなあ。本当に鬱陶しい。辟易して千景は鍋奉行を強制的に担当させられている瑛人に愚痴る。 「瑛人、何で航生を鍋に呼ぶの? 二人で仲良く食べたかったのに」 「航生が鍋が食いたいと言ったから」  瑛人は先ほどから面倒そうにそんな返ししかしてこない。鍋の管理に集中していてこちらの会話に加わろうという気が感じられない。  彼は面倒ごとを押しつけられても結局真面目にそれに応じているから、そういう役割から抜け出せないのだと思う。
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