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 うーん。ちょっとこれは馬鹿みたいというか、流石に女々しいな。  そう気づいて赤くなって、畳み直して瑛人の引き出しへと戻す。こんなことをしていると知ったら、瑛人はまた不愉快な顔を全面にして速攻で洗濯機に投げ入れてしまいそうだ。  それはそうか。義弟から好意を寄せられるなんて気持ち悪いと思われるのは当然だと思う。  千景だってもし同じ立場だったらぞっとする。いつ貞操を狙われるかと常にびくびくしそうだし、近づきたくないとさえ思うだろう。  それなのに瑛人はよくやってくれている。いくら弟だからといってもう子供ではない千景の世話を毎日欠かさない。炊事、洗濯、掃除、その他雑用すべてこなしてくれている。千景も手伝いたいのだが、不器用だから失敗ばかりして彼の用事を余計に増やしてしまうので、逆にやるなと命じられている。  いつからこういう生活かというと、最初からではない。  千景が高校一年生の時に千景の母と瑛斗の父が再婚した。  そしていきなり、他人だった二人が兄弟になった。  このご時世よくある話だ。  でも当時瑛人は大学四年生で、家族四人揃って同居生活をしたのはたった一年に満たないほどだった。その後瑛人は就職して、職場に通える場所に実家があったにも関わらず、家を出て一人暮らしを始めてしまった。独立したかったのか一人になりたかったのか、理由は定かではない。
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