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「チカ、おまえ結構モテるんだな」
「男にね」
「高校時代からちらほら聞いたことはあったけど、おまえが全然言わないから」
「自慢にならないし」
というよりもあまり話したくない。何となく惨めだからだ。男らしい瑛人と全然違う。彼は女性からモテるけど、千景は男からしか言い寄られない。何一つ得はないし、瑛人からもいい印象を持たれない気がして、自分から率先して言おうとは思わない。
だから電車で痴漢被害に時々遭うけど、それも報告したことはない。
「まさか大学のほうでも言い寄られてるのか?」
「時々」
「変なことされてないか?」
「べたべた身体触られるくらい」
「何やってるんだ。触らせるなよ」
「だって、俺も瑛人にべたべたしてるから人のこと言えない」
「それとこれとは話が別だ。俺は兄弟でそいつらは他人だろ」
「兄弟ならべたべたしていいってこと?」
「そういうわけじゃ…。もういい。時間がない。明日話す」
瑛人は一方的に話を終結させてしまった。千景も白米と漬物を口の中に入れてもさもさと咀嚼する。
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