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【11】意味のない約束
俺は中学生か?
宇佐見はため息を吐きながら、ノートを真剣に取る華井の横顔を見つめた。
長い睫毛が瞬きをする。
丸い大きな瞳が教壇を見る。
癖なのか、考え事をしながら唇に触れる。
今すぐ隣に行って抱きしめたい
髪を撫でて、甘い香りを思い切り吸い込んで、あの柔らかい唇をまた塞ぎたい…
そして…
『でも…純くんのことは嫌いじゃ無い』
そうじゃない
俺を好きだって…言わせたい…
「何だよ宇佐見、珍しいな~」
赤坂の筆がパレットの上を泳ぐ。
「お前が俺のスケッチに付き合うなんてさ。
サクや賀川ちゃんはどうした?」
「…なんか…涼と図書館行くとか言ってたけど…」
「…ふーん。お前も行けばいいじゃん」
「俺…ヤバいの」
「ふーん」
赤坂は大して気にも止めずに、キャンバスに筆を走らす。
「…涼見てるとさ…めちゃめちゃ触りたくて…」
「うん」
「俺のこと…好きだって言わせて…泣かせたくなる…」
「うーん」
赤坂は筆を置くと缶コーヒーを一口飲んだ。
「ぬるっ!ぬるいな~」
宇佐見は苦笑いをして赤坂を見た。
「冷たいの、買って来てやろうか?」
「ま、これはこれでいいや」
赤坂はごくごくと缶コーヒーを飲んだ。
「宇佐見も自分の趣味最優先の恋愛ごっこ卒業かぁ~」
「…赤坂?」
「でも、とんでもなく難しい相手に本気になったな~」
赤坂はふにゃっと笑って宇佐見の頭を軽く叩いた。
その日、華井と宇佐見は会うことも無く別れた。
翌日の金曜日は夜食事に行ってから、朔宮の家に泊まると言うことで、五人は朝からハイテンションだった。
華井は磯焼きの店は初めてらしく、嬉しそうに赤坂に色々と質問していた。
宇佐見はちょっと複雑な気分だった。
華井は意図的なのか無意識なのか、宇佐見と二人きりでは話そうとしない。
最初は気のせいかと思った。
だが宇佐見が華井に話しかけると、必ず赤坂か賀川か朔宮を自然に話題に誘い込む。
そして決定的だったのは、昼休みに宇佐見の隣りが空いてるのに拘わらず、「サク、雅也と話したいことがあるから席代わってくれる?」と訊いたのだ。
賀川は喜んで、「サク~!早く純くんの隣りに行ってよ!」と浮かれて言う。
朔宮は別に気にする風でも無く、「はいはい」と言って宇佐見の隣りにズレた。
だからと言って、華井は別に宇佐見に冷たい態度を取るわけでは無い。
いつものように笑顔で宇佐見と話す。
ただ絶対に二人きりにはなろうとはしなかった。
金曜日の夜の新宿は人が溢れ返っていた。
五人は講義が終わってから、予約の時間まで結構時間が空いていたので、一度朔宮の家に寄って荷物を置いてから来たので軽装だった。
予約した磯焼きの店も満員で、五人が到着した頃には香ばしい匂いと炭火焼きから立ち上る煙が充満していた。
華井は賀川と朔宮に挟まれて座り、その前に赤坂と宇佐見が座った。
貝類を中心とした海鮮焼きに、華井は目を輝かせていつもように、「うまい~!」を連発して夢中で食べていた。
そして生ビールを美味しそうに飲んでいた。
途中トイレに立った時も、「サク一緒に来てよ」と言ってひとりでは行動しようとしなかった。
帰りのラッシュに巻き込まれないように、コース料理を食べ終わると、五人は直ぐに店を後にした。
みんなホロ酔いで気分が良かった。
電車もタイミングが良かったのかそれ程混んで無くて、スムーズに朔宮の家に帰れた。
朔宮の家に着くと、煙りまみれの身体をまずはシャワーでスッキリさせようと言うことになった。
交代でシャワーを浴びて一息つくと、すでに夜中の1時を回っていた。
赤坂は真っ先に「じゃあな〜」と言って寝室に向かって行った。
明け方までゲームをやることもある朔宮は全然平気そうで、賀川と宇佐見と華井相手にゲームをしていた。
その内、華井が「ごめん、もう限界。先に寝る。俺のことは気にしないで遊んでて」と言って寝室に向かおうとした。
宇佐見は思わず、「涼…ひとりで寝られるの?」と訊いた。
「時間掛かるけど、何とかなるから」
華井は笑って言うと、寝室に入って行った。
結局、風呂上がりの酒も入っていたせいか、賀川と朔宮はコントローラー片手にリビングで爆睡した。
宇佐見は二人にタオルケットを掛けてやると、照明を落として寝室に向かった。
寝室に入ると華井が窓の側に立って外を見ていた。
「…涼、眠れないのか?」
華井は窓に向かったまま、「うん」と答えた。
「…腕枕…しようか?」
「今日はいい。
俺のことは気にすんな。
純くんこそ寝ろよ」
華井はそう言うと、寝室を出て行こうとした。
宇佐見がその腕を掴む。
「…涼…今日なんか変だよ」
「気のせいだろ?」
「違う。こっち向けよ」
「…向いたら?」
「…え?」
「そっち向いたら…純くんの気が済むの?
それだけで?」
「涼…!」
宇佐見は華井の腕を引くと抱きしめた。
「俺の気持ち…分かってるだろ?
なんで?なんで…そんな言い方…」
「…純くんだって…俺の気持ち知ってんだろ?
…俺は…誰とも付き合わない」
宇佐見は華井を抱きしめる腕にぎゅっと力を込めた。
「でも…俺のこと嫌いじゃ無いって言った…」
「…純くん…」
「涼からキスしてくれた」
「……」
「俺…涼に触れたい…。
そればっか考えてる」
華井は小さくため息を吐いた。
「…昨日…純くんの様子が変だったから、せっかく二人きりにならないようにしてたのに…。
こんな夜中に二人きりになるなんてな…」
「…涼…」
「純くん…。
約束できる?」
「約束?」
華井は顔を上げて宇佐見の目を見た。
「触れるだけのキス…絶対に舌を使ったりしないって約束できる?」
「…約束したら?」
「好きにしていいよ」
「…約束…する」
華井は宇佐見の首に腕を回すと、「…純くん…」と囁いた。
宇佐見は、華井の額に瞼に頬に唇に次々とキスを落としていった。
華井は睫毛を震わせ、時折甘い吐息を漏らす。
そっと白い喉に唇を当てると、「…ぁ…」と小さな声がした。
宇佐見はそのまま首筋にキスをしながら、華井のパジャマの釦を外した。
釦を全て外して前を開けると、真っ白い身体と桜色の胸の突起が目に入った。
宇佐見の喉がゴクリと鳴る。
宇佐見が華井の背中を抱えて上着を脱がす。
華井は素直に従った。
宇佐見は思う存分その肌に舌を這わせ、吸い上げたいのをなんとか我慢した。
そうして華井の上半身に万遍なくキスを落としていくうちに、華井の不思議な反応に気が付いた。
華井は目をぎゅっと閉じて小さく喘いでいる。
キスをする宇佐見の髪に指を差し込む。
まるで焦れていて、もっと強い刺激を待っているようだった。
でも、と宇佐見は思った。
自分で絶対に舌を使うな…触れるだけのキスって約束させた…
だけど涼は誰かとセックスしてるはず…
こんな約束に何の意味がある?
華井のパジャマのズボンを少しズラしてキスを落とすと、華井の身体がブルッと震えた。
見ると、緩く立ち上がっている華井自身が目に入った。
宇佐見はズボンに手を差し込み、下着の上からそっと掴んだ。
下着はもう湿っていた。
「涼…触って欲しい?」
宇佐見の囁きに華井がコクリと頷く。
宇佐見が下着に手を入れて直接触ると、「…あぁっ…」と震えた声を上げた。
宇佐見は華井のズボンと下着を一気に降ろした。
唇にキスをして囁く。
「イかせてあげる…だから涼も俺にして?」
華井の手を取り、自分自身へと導く。
硬くそそり立つ雄に、華井の手がビクッと震える。
「…分かんない…」
華井が小さく呟いた。
「…え?」
「俺…どうやっていいか…分かんないもん…」
その拗ねるような口振りに、宇佐見は驚いて華井を見た。
華井は潤んだ瞳で、責めるように宇佐見を見上げている。
「分かんないって…自分にやるように…して?」
「自分でなんか…したこと無い」
「…えっ!?」
したこと無いって…
…嘘だろ…??
「それに…純くんの体液…触れるか…自信無い…」
「た、体液って…」
涼ってやっぱり変わってる…
華井は本気で戸惑っているように見えた。
宇佐見は一瞬で頭をフル回転させた。
「じゃあさ…涼と俺の体液…混ざり合ったら…どう?」
「…混ざり合う…」
「うん。それで俺の言う通りにして。
それだけでいいから」
華井は思案気に宇佐見をじっと見た。
宇佐見がそっと華井の前髪を撫でる。
「…やってみる」
華井の小さな声がした。
宇佐見は自分も下半身を脱ぎ捨てると、華井自身を蜜を広げるように扱いた。
「あ…ぁあ…ん…」
華井は小刻みに身体を震わせて、必死に宇佐見に縋りついてくる。
伏せた睫毛に涙が滲む。
「こんなに濡らして…涼っていやらしいな…」
華井は宇佐見の囁きに、真っ赤な顔でイヤイヤするように首を振る。
普段の生意気とも言える態度とは、別人のようだった。
ヤバ…
ベッドの中の涼ってこんなにかわいいんだ…
宇佐見は手の中の質量が十分に増すと、そっと自分自身を擦りつけた。
華井の身体がビクッと震える。
目を見開いて不安気に宇佐見を見上げている。
「平気。涼、手を添えて…」
華井はおずおずと重なった二本に手を伸ばした。
宇佐見がその手を包むと緩急をつけながら上下させ、腰を動かす。
「んんっ…は…ぁ…ん」
華井が小さく喘ぎ出す。
宇佐見からも溢れる蜜で、二本は滑らかに動き、擦り合わさる。
宇佐見は華井の手が抵抗する様子も無く、宇佐見の手に合わせて動くのを確認すると、片手を外して人差し指を舐めた。
華井は片手になった宇佐見の動きに気が付かないようで、宇佐見の動きに合わせて必死に手を動かしている。
宇佐見は舐めて濡らした人差し指を、華井の後孔にそっと差し込んだ。
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