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【18】初めての夜は雨
翌日、天気は不順だった。
カンカン照りに晴れていたかと思うと、突然雷雨になる。
だが宇佐見には、そんなことはどうでも良かった。
いつもより早めにバイトに向かった。
そうして制服に着替え終わる頃、華井が現れた。
華井は目を大きく見開くと、それでも平静を保とうとしているのか、「純くん、おはよ」と短く言った。
その顔は真っ赤で、俯きながらロッカーを開いていた。
やっぱりかわいいな…涼
宇佐見は自然に笑みが零れた。
「俺さ~先輩に出勤変わってくれって言われてさ。
6連勤だよ?」
「純くんなら6連勤くらい、どうってこと無いんじゃない?」
華井がクスクス笑う。
「涼…俺のこと何だと思ってんの?」
宇佐見がぶーたれて言うと、「…頼りになるかな」と小さい声で答えた。
久し振りに華井と一緒に仕事をした宇佐見は、いつもと変わらない華井にホッとした。
仕事もスムーズに終わり、ロッカーで着替えていると雷鳴が轟いた。
華井は怖そうに窓を見つめている。
「涼、雨が止むまで時間潰そうよ。
またファミレスでも行く?」
華井は宇佐見の顔をチラッと見ると、「俺のことは気にすんな」と言い捨て着替え出した。
その時、宇佐見の頭の中で何かが切れた。
「…気にすんなって…気になるに決まってるだろ!?
涼…会いたいって言ったり、距離置きたいって言ったり…俺の気持ち知っていながら、よくそういう態度取れるな!?」
「…境界線…越えるのが怖いんだ…」
華井は俯くとポツリと言った。
「俺は…俺は涼が好きだ。
覚えてるだろ?
過去だって塗り替える。
傷つくのだって怖くない。
境界線なんてとっくに越えてる!」
宇佐見はそれだけ言うとバッグを掴んでロッカーを走って出て行く。
「純くん…!雨が!」
華井の声に宇佐見は振り返らなかった。
宇佐見は豪雨の中、傘もささずに駅に向かってひたすら走った。
痛いくらいの雨粒が顔を叩く。
駅の手前に小さな公園がある。
そこの屋根付きのベンチで一息入れた。
涼…悲しそうだった…
本当に境界線を越えるのが怖いんだ…
お兄さんさんと俺との境界線…
それなのに…俺は怒鳴って置き去りにして来た…
宇佐見は缶コーヒーを一気に飲んだ。
「…良い気なもんだな」
突然近くで声がして、宇佐見は飛び上がる程驚いた。
恐る恐る見ると、全身びしょ濡れの華井が立っていた。
「涼…?」
「涼、じゃねえ!
相変わらず呑気なヤツだな!
俺がどんだけ探したと思ってるんだよ!?
その張本人がコーヒー飲んでベンチで一休みか!?
ふざけんな!」
「俺のこと…探してくれたのか?」
「し、仕方ねぇだろ!
純くん、傘も持たずに出で行ったし…お、怒ってたみたいだし…」
「涼だって傘さして無いだろ…」
「………」
宇佐見は立ち上がると華井を抱きしめた。
「夏でも…雨冷たいな」
「………」
「今夜一緒にいてくれよ」
「…急には無理だ…」
「…じゃあ…いつまでもこうして抱いてる」
「…脅迫かよ…」
「そう。
俺、涼と一緒に居られるなら、いくらだってズルくなるよ」
華井が宇佐見を見上げる。
雨に濡れた華井のその顔は、唇だけが赤く色づいていた。
宇佐見はその濡れた唇にキスをした。
華井は電車の中で前野に、『今日は友達の家に泊まる』とだけラインすると、スマホの電源を切った。
宇佐見の家に着くと、二人はもつれるように浴室に入った。
シャワーを出しっぱなしにし、宇佐見は激しく華井に口づけた。
お互い反応した雄を擦り合わせる。
宇佐見の手の中で二人は白濁を溢れさせた。
それから手早くそれぞれが身体を洗っている時、宇佐見は華井の身体が真っ白でキスマークひとつ付いていないことに気が付いた。
お兄さんが気を使ってる…?
宇佐見は余計なことだと、頭からその考えを追い出した。
涼がお兄さんと関係を持っているのは承知してるんだから…
華井は浴室を出ると水を飲みながら、「ごめん」と一言言った。
宇佐見は華井の肩を抱いた。
「何で謝るんだよ?」
「俺…純くんを避けてた…」
「…うん」
「俺…兄貴とのこと…話さなきゃいけないんだ…!
そうでなきゃ…」
宇佐見は華井を抱き寄せると、そっとおでこにキスをした。
「無理に話さなくていいよ。
涼が自然に話したくなる日を俺は待つから」
「でも…純くんは、それで良いの?」
「良いよ。
無理強いなんてしたく無い。
そんなことより、もう俺を避けたりしないって約束して」
「…分かった」
「それと…今夜は涼の全てが欲しい」
「…うん…」
華井が潤んだ瞳で宇佐見を見つめる。
宇佐見は華井を抱き上げると寝室へ向かった。
寝室のダウンライトに照らされた華井の身体は眩しい程に白く輝いていた。
宇佐見は深いキスを何度も唇に落とすと、白い喉に舌を這わせた。
「ぁ…あ…じゅんくん…」
華井が甘い声で喘ぐ。
その声に負けない位、華井の肌は甘かった。
やさしくしなくちゃ…
そう何度も思っても理性が追いつかなかった。
鎖骨に舌を這わせ吸い上げ齧りつく。
「ああんっ…やぁ…」
華井の悲鳴混じりの声も興奮材料にしかならない。
胸の突起に辿り着くと、華井の身体が震えた。
舌で転がしながら強く吸い付く。
空いてる突起を指で捻り、時折爪を立てる。
「やぁっ…へん…なるっ…やめ…」
カリッと音がする位、歯を立てると、「じゅんくんっ…!」と華井が叫んでシーツをぎゅっと掴んだ。
宇佐見は華井の身体のありとあらゆる所に唇を這わせた。
そうして華井が感じる場所を執拗に責め立てた。
華井は真っ赤な顔で涙を流して、もうやめてと途切れ途切れに哀願する。
それすら宇佐見の嗜虐心に火を付けるだけだった。
宇佐見は勃ち上った華井自身から蜜が溢れ零れ落ちているのを確認すると、華井の腰に枕を差し込んだ。
華井は不安そうに、「…なに?」と言った。
宇佐見はそれには答えずに、華井の両足をギリギリまで左右に開いた。
「…じゅんくん…やだ…こんな格好…」
華井が身を捩って足を閉じようとする。
だが宇佐見は太腿の裏を両手で押さえつけた。
「涼…絶対に足を閉じないで。
辛かったら自分で支えて。
いいね?」
華井は戸惑いながらも頷く。
宇佐見は今までの愛撫で、華井が全てに置いて受動的なのを理解していた。
いつもお兄さんの言いなりに抱かれてる…
だから命令されればそれを受け入れる…
宇佐見はローションを指に垂らすと、人差し指を蕾に一本差し込んだ。
「ああっ…!」
華井が太腿を支えながら仰け反る。
宇佐見は驚いた。
キツイ…
前に指を入れた時はこんなにキツく無かった…
まさか…
「涼…最近お兄さんさんとセックスして無いの?」
華井は恥ずかしそうに頷いた。
「…いつから?」
「…もう一週間くらい…純くんと会わなくなってから…」
「なんで…」
あんなに涼を激しく求めるお兄さんを、いくら涼だってかわせる筈が無い…
「…だって…イヤだったんだ…どうしても。
身体に跡もつけないようにお願いもした。
その代わり、何でも言うこときいた」
「…そう」
宇佐見は差し込んだ指をやさしく動かした。
人差し指でかなり解れると、指を三本に増やし、華井の感じる部分に触れながらゆっくりと解してゆく。
その内、華井が焦れたように腰を振り出した。
「もう…もう…来て…ぁあ…」
「もうちょっと…傷つけたくない」
「も…平気…じゅんくん…お願い…」
華井の瞳に欲望の灯りが見えた。
宇佐見は痛いほど起立した自分自身に、ローションをたっぷり垂らした。
「涼…ごめん…生でヤらせて」
宇佐見はそう言うと肉棒を蕾に沈めていった。
華井の中は予想通りキツく宇佐見自身に絡みつく。
「…は…涼…キツ…いいよ…スゲー気持ち良い…」
浅い所を慣らすように抜き差しすると華井が啼き出す。
「ぁん…もっと…奥…きてぇ…」
「ふふ…奥が良いんだ?
かわいい…淫乱ちゃんだね」
宇佐見は一旦ギリギリまで雄を引き抜くと、一気に奥へと貫いた。
「ああっ…いいっ…もっと…もっと…!」
華井の身体がビクビクと跳ねる。
宇佐見は華井の感じる場所を的確に掠めながら、奥へ奥へと挿抽を繰り返す。
「ああんっ…も…だめぇ!
イく…イっちゃう…!」
宇佐見は片手で華井の腰を支えると、空いた手で華井自身を扱いた。
「…ん…俺も…一緒にイこう」
宇佐見がそう言って激しく腰を打ちつけると、華井は一瞬不思議そうな顔をした。
だが次の瞬間、「ああっ…じゅんくんっ…」と甲高い嬌声を上げると白濁を散らした。
宇佐見も同時に華井の最奥へと白濁を放った。
宇佐見は華井の身体に散った白濁をさっとティッシュで拭うと、風呂の給湯ボタンを押して、華井を抱き上げると浴室に向かった。
宇佐見はまず、華井の身体の中に放った精液を掻き出した。
華井は慣れているのか、されるがままにじっとしていた。
それから華井は当然のように宇佐見に身体を洗って貰った。
丁度二人が洗い終わると湯が張れたので、宇佐見は華井を抱きかかえるように湯船に入った。
華井は満足気に宇佐見に身体を預けていた。
宇佐見は華井のうなじにキスを落とすと、さり気なく切り出した。
「涼は、セックスの後、風呂に入る時って必ずお姫様抱っこしてもらうの?」
「うん。そうだよ」
華井は笑って答える。
「じゃあ…身体洗うのも?」
「うん。初めての時からそうだから」
初めて…お兄さんがそうしてるから、涼にとっては当たり前なんだ…
「純くんこそ変わってるよな?」
華井は振り向くと、宇佐見の首に手を回して言う。
「…俺…?」
「うん。何ですぐにイかしてくれたの?」
「…なんでって…涼も限界だっただろ?
俺もそうだったし…一緒にイきたかったから」
宇佐見が照れて言うと、華井は益々不思議な顔をした。
「なんで俺に質問しないの?」
「質問?」
「そう。純くんは俺に確認しなくていいの?
自分のものだって」
「俺は涼が好きだし、涼も俺を好きだって言ってくれた。
これ以上何を確認するんだよ?」
「…ふうん。純くんってやっぱり変わってるな」
華井はまじまじと宇佐見の顔を見ると言った。
風呂から上がると、二人はベッドに入った。
宇佐見が華井に腕枕をしてやり、華井が充分にリラックスしていることを確認すると、そっと髪を撫でながら訊いた。
「涼…お兄さんさんとセックスしなかった間、お兄さんの言うこと何でもきいたって言ったよな?
お兄さんに何されたの?」
華井は眠そうな声で「…ドライオーガズム…」と一言言った。
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