【23】幸せ

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【23】幸せ

翌日、宇佐見は悩んで昼食をオムライスにした。 簡単過ぎるかなと思ったが、華井が大好きだと言ったから。 正午に合わせて作り終えると、丁度インターフォンが鳴った。 モニターに映る華井を見るだけで、宇佐見の胸は高鳴った。 華井はいつもの照れ臭そうな顔をして、「久し振り」と小さく笑った。 テーブルに用意されたオムライスを見ると、華井は笑顔で「うまそ~!」と言った。 宇佐見は二週間の空白が一気に埋まっていく気がした。 それでも華井は宇佐見と一定の距離を保っていて、それを崩そうとはしなかった。 ただ表情だけはニコニコと笑顔で、以前と変わらず見えた。 食事が終え、一息入れるとまず宇佐見が口を開いた。 「涼…あの夜のこと、謝っても許されるとは思って無いけど…ごめん」 華井はちょっぴり困ったように笑った。 「そうだな。ちょっとキツかった」 「…うん。俺が全部悪い」 「あの時…純くんは何で俺の話を聞いてくれないのかって、ヤられてる間ずっと思ってた。 でも純くんの涙を見た時、解ったんだ」 華井はそう言うと、宇佐見の頬に手を伸ばした。 「純くんは俺と兄貴が青山のホテルに入って行くのを見たんだろ? 純くんにとって、それだけで、傷付くのに十分の理由だった。 だから…俺にその気持ちを解って欲しかったんだよな?」 「…涼…」 「でもあの時はお互い冷静に話せる状況じゃ無かった。 俺はそれでも誤解だけは解きたかった。 だから…離れたんだ。 いつかきちんと話せる日が来るって思って…信じてた」 「俺も…。 涼と必ずまた会って話せるって…信じて探してた」 宇佐見は自分の頬に当てられた華井の小さな手を強く握った。 「…うん…」 華井はちょっと顔を赤くすると俯いた。 「…あの日兄貴と会ったのはさ…前の日兄貴に電話で会って話そうって言われた時、兄貴限界近いなって思ったんだ。 出来れば俺の気持ちも話しておきたかったし…」 「…どうしてホテルへ行ったんだ?」 「最初は家で話そうって言われた。 でもそうしたら、なし崩し的に家に連れ戻されるかもって思ったから、会うなら外が良いって、俺が言ったんだ。 そうしたら外で出来る話ばかりじゃ無い、絶対何もしないっていう約束で部屋に行った」 「…涼、お兄さんと楽しそうに歩いてた」 華井はほんの少し目を見開くと、小さく笑って言った。 「そりゃあ不機嫌で話されるより、機嫌良く話してもらう方が有利ってもんだろ?」 「…だな」 宇佐見は片手で握っていた華井の手を両手で包んだ。 「俺は言ったよ。 兄貴が薬を使ったことがどうしても許せなかったこと。 これから先、俺の意思を無視するなら一緒には暮らせないこと。 兄貴は当然だけど驚いてた。 兄貴に出会ってから、俺が兄貴に反抗したのは初めてだったから。 それでも兄貴と一週間も離れていたのも初めてだったから、兄貴も兄貴なりに考えたらしい。 反省したから、残りの夏休みは俺の好きなように生活して良いって言ってくれた」 そこで華井は一旦言葉を切ると、宇佐見の両手に包まれていた自分の手を抜いた。 そしてぷいっと横を向いた。 「…それと…俺が兄貴とセックス出来ないこと…」 みるみる華井の頬が赤くなっていく。 「兄貴は俺が兄貴しか知らないから、単なる好奇心で他の男に興味が出たんだろう、気にしてない、涼くんは必ず俺じゃなきゃ駄目だと気付くと言った。 でも…俺は…」 そこまで言うと華井はソファの上で膝を抱えて顔を隠してしまった。 「…涼? あのさ…もうお兄さんに会った理由も話の内容も解ったし…言い辛いならもう…」 宇佐見はそう言うと、そっと華井の肩に触れた。 「いいのかよ?」 「え?」 「今…じゃなきゃ…きっともう言えない」 「…えっと…」 「あー!もう! 本当に面倒臭いヤツだな! 空気読めよ! 純くん、モテるんだろ!?」 華井は真っ赤な顔で宇佐見を睨む。 「でも…涼の嫌なことは二度としたくないし…」 「嫌なこと!? 純くん、俺が純くんが好きなことが嫌なのかよ!?」 「…えっ…ええっ!?」 「だから…! 兄貴に好奇心なんかじゃない、そいつが好きだから兄貴としたく無いんだってハッキリ言ったんだよ!」 「…嘘…そんなこと言ったら…お兄さん…」 「黙り込んでた。 でももうそれで話は終わりだ。 だから俺はホテルを出てこの家に帰って来た。 解ったか! この鈍感!」 「…涼!」 宇佐見は華井を正面から抱きしめた。 「馬鹿っ!苦しいっ…」 「涼に俺からも良いこと教えてやるよ」 「…なにっ…」 宇佐見は身体を離すと、華井の小さな顔を両手で包んだ。 「…初恋は実らないなんてね…恋に恋する夢見る女の子が言う台詞なんだよね」 「…なっ…」 華井が真っ赤っかになって宇佐見の手から逃れようとする。 「涼って実は純情なロマンチストなんだ? それなら俺もこれから態度変えなきゃ」 宇佐見がチュッと音を立てて華井の唇にキスをする。 「…純くんってヤツは…!」 「はいはい。もう黙って。 とびきりロマンチックなキスしてあげるから…」 宇佐見は華井の唇を塞いだ。 とびきりロマンチックなキスだと!? 純くんのヤツめ…! 「ぁ…ああ…んんっ…」 「涼…口が休んでる。 そんなに気持ちいい?」 宇佐見の指が華井の蕾を弄り、華井自身を咥える。 「んー…っ!んんっ…」 華井はシックスナインの姿勢を取らされ、宇佐見の上で必死に宇佐見の雄を咥えながら喘いでいた。 「すっげ中トロトロであちぃ…こんなに濡れてるし後ろだけでイけるんじゃない?」 宇佐見がグイッと華井自身を扱く。 「んんっ!ん…ぁ…っ」 思わず華井の口から宇佐美の雄が外れる。 それでも華井は指も使って、また口に含む。 「…あ…涼…いい…一緒にイこう…」 宇佐見の熱い吐息が華井の小振りな真っ白い尻を掠める。 それと同時に華井の蕾の中の指が、感じる場所を的確に攻め始める。 「んんっ!んーっ!んああっ…」 「…く…イくよ」 華井自身が宇佐見の口内に含まれた瞬間、華井は白濁を散らした。 同時に溢れた宇佐見の白濁を、華井は喉を鳴らして飲み込んだ。 宇佐見は華井をシーツに横たえると、乱れた前髪を撫でた。 「一回イってるから、次は長く楽しめるな」 宇佐見は輝くような笑顔で言う。 「…そんな男前な顔してエグいこと言うなよ…」 だがそう呟く華井の言葉も宇佐見の耳に入らないようで、宇佐見は嬉々として深いキスを始める。 宇佐見は夕方になるまで華井を離さなかった。 まずは正常位で本気で泣かされた。 「…ぁ…ああ…無理…じゅんくんっ…イっちゃう…!」 「いいよ。イって。 俺、余裕だから。 もっともっと気持ち良くさせてやる」 その言葉通り、華井がイっても宇佐見は余裕で腰を打ちつけてくる。 「やぁっ…変なる…変なるっ…」 華井の真っ赤な顔に涙が零れる。 「変になった涼見たい。 あ、ヤベ…イく…!」 華井は最奥に吐き出される白濁にブルッと身体が震えた。 でも…もう終わりだ… そんな華井の安堵をよそに、宇佐見は肉棒を引き抜かず、蕾の中で動かしている。 グチュグチュと卑猥な音がする。 「あー涼の中…最高…このままいたい」 分かったから早く抜いて… そんな華井の願いも虚しく、宇佐見の雄が質量を増していくのを感じる。 「じゅんくん!?嘘だよな!?」 「嘘って何が? 抜かずの二回目いくぞー。 あ、今度はバックにしよ」 華井は雄を入れられたらまま、器用にコロンと後ろ向きにされた。 「…じゅんくんっ…待って…!」 宇佐見はそんな華井の言葉は一切無視して、奥へ奥へと穿つ。 もちろん華井の感じる場所も抉られる。 「ああんっ…いいっ…いいっ…死んじゃう…死んじゃうからぁ」 「…かわいい…天国に連れて行ってやるよ…」 宇佐見が華井の背中にキスを落とす。 宇佐見の激しい責めに耐えきれず、華井は不本意ながら本日三度の絶頂を迎えた。 上機嫌の宇佐見に後ろから抱えられながら、華井はバスタブに浸かっていた。 「涼、夕飯何食べたい? 外行こうか?車出すし」 「…そんなのは後!」 「え?腹減っただろ?」 「純くん…今日ゴムしなかったよな!?」 「あー…用意はしてたけど、涼とセックスするの久し振りだし…やっぱ生かなって」 宇佐見が華井の襟足にキスをする。 「バカバカバカ! かっ…掻き出されるの本当は超恥ずかしいんだぞ!?」 「平気。 俺、指長いし器用だから。 あ!まだ夜は長いし出掛けるのは止めよう! 二週間ぶりの涼を堪能しなきゃ!」 「はぁ!?」 「さっ出よう!」 華井は強引にバスタブから立たされた。 華井は荷物を賀川の家に置いてきたので、着替え一式は宇佐見が貸した。 それからデリバリーを頼んでる間に、華井は賀川に電話を掛けて明日荷物を取りに行くと言った。 『涼ちゃーん! 何水臭いこと言ってんの! 明日、俺バイトだから届けてあげるよ〜。 それでさ、みんな誘って純くんと涼ちゃんが仲直りしたパーティーしよっ! 仕切りは俺に任せて! じゃあ明日ね~』 華井は一方的に喋られ、一方的に切られたスマホをポカンとして眺めていた。 「賀川、何だって?」 華井は宇佐見に振り返りもせず、ポツポツと言う。 「俺の荷物は届けてくれるって…それで明日みんなでパーティーするって言ってた…」 「パーティーって何の?」 「俺と純くんが仲直りしたからって…! ヤダよー! そんな恥ずかしい理由でパーティーなんて絶対ヤダ!」 華井がクッションを抱いてソファの上をのたうち回る。 宇佐見は笑って華井を抱きしめた。 「俺は嬉しい…。 たった三人でも俺と涼が恋人だって認めてくれる人がいるのって」 「…純くん…」 「誰も認めてくれなくても、あの三人が認めてくれたら最強だろ?」 「うん…。 純くん、ごめんな…」 「何で涼が謝るんだよ?」 「俺に…兄貴が居るから…」 宇佐見は華井のおでこにキスをした。 「涼は今、お兄さんさんじゃ無くて俺を選んでくれた。 十分だよ」 「…純くん…」 「そんなウルウルした目でみると、また押し倒すよ?」 「純くん!」 華井が真っ赤になって怒鳴ったのと、デリバリーが届いたのは同時だった。 二人はビールを飲みながら、会えない間の話で盛り上がった。 宇佐見は話しをしているうちに、華井が普段は鎧のような警戒心で他人を寄せ付けない癖に、一旦心を許すと、その警戒心が消え去ってしまうことに気が付いて、頭が痛くなった。 華井にとって赤坂と賀川と朔宮は初めての友達で信頼しているのだろうが、腕枕をして貰って寝ていたのは勿論、風呂にも一緒に入っていたという。 「何で風呂に一緒に入る必要があるんだよ!?」 宇佐見の余りの剣幕に華井がたじろぐ。 「だって…一緒に入ろうって言われたし…。 洗いっこしたりしてさ、お喋りしたり…楽しかったから」 洗いっこ!? アイツら…楽しんでたな、絶対! 「涼は今後一切、俺以外と風呂に入るのも腕枕して貰うのも禁止ね」 「…何でだよ?」 「だって涼はこれからずっと俺んちに居るんだから、他のヤツと風呂に入ることも腕枕もする必要無いだろ!」 華井はクスッと笑った。 「また純くんと喧嘩したらどうすんだよ?」 「もう喧嘩なんかしない!」 「どうかな~純くんはすぐにヤキモチ焼くから」 宇佐見が華井を抱き寄せる。 「涼!なんで意地悪言うんだよ?」 「意地悪じゃ無い。事実だ」 「…もっと悪いだろ…」 宇佐見が華井の耳朶を甘噛みする。 「…んっ…じゃあもうヤキモチ焼かない?」 「…涼次第…ヤキモチ焼かせんな」 「ふふっ…くすぐったいよ…純くん…」 「涼の肌…甘い…」 俺は子供だったんだ… 「もう…喧嘩は…無しだかんな?」 許されるならそう弁解させて? 「分かった…。 涼…好きだよ…」 まだ21才の学生で 「ぁ…ん…あっ…は、ぁ…じゅんくん…」 世間なんてこれっぽっちも知らないお坊ちゃんで 「…ん…涼」 好きな人がこの腕に返ってきた喜びで一杯で 涼が抱えている現実とか 涼がどんな気持ちで喧嘩は無しと言ったかとか 夏がどんなに早く過ぎ去るとか 何にも考えられ無かった 俺の腕の中で甘く喘ぐ涼で俺は満たされていたから 「あ、ぁ…っ…じゅんくんっ…」 「あげるよ。俺の全部あげる…だから自分で開いて?」 「…は…ぁ…来て」 「かわいい涼…いくよ…」 「あっ…あぁっ…じゅんくんっ……」 何度あの場面に戻っても 俺は馬鹿みたいに涼を抱くだろう そうして繰り返し囁くんだ 好きだよ涼って あの言葉に嘘は無いよ 少なくとも俺は幸せで そう言わずにはいられなかったんだ その気持ち 欠片でも涼に届いていたらいいな あの時、一瞬でも俺の言葉で涼が幸せ感じてくれてたらいいな もう… 確かめる術も無いけれど 「うるっせーよ!」 「ギャー!純くんがセクハラするー!」 「だから…うるせっ! 涼が起きるだろーが! 上がるなら早く上がれよ!」 玄関で固まる賀川に、下着しか身に着けていない宇佐見は心底不機嫌にそう告げた。 もう午前10時を廻っていたが、華井と宇佐見が眠ったのは午前5時頃だったから。
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