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幸せお風呂
「A B C D♪ E F G♪ H I J K…」
肩まで湯船に浸かって娘のゆかりとこの歌を歌う。はぁ~なんて幸せなんだろう、俺の毎日。
「えっとぉ…L N L!」
「ブブー。なぁんでLが2回出て来ちゃうんだよ~」
いつもゆかりはここを間違うんだよなぁ。
俺は間違えたバツとして、出来立てのお餅みたいなほっぺを両手で挟んで押しつぶす。
「キャハハハッ」
わざと間違えてるんじゃないかと思うくらい、可愛い。
「ほら、もう出るぞ~。指の先がシワシワになっておばあちゃんになっちゃうぞ~。」
「きゃー!ホントだぁ!指がシワシワ!早く出なきゃ~!」
何を言ってもオオウケ。可愛い。
「もぉ!大騒ぎしないの!ご近所迷惑!」
風呂から出るとママが呆れながらバスタオルを構えて待っている。
「ママ!ゆかりの指シワシワ!おばあちゃんになっちゃう!」
「ゆかりがおばあちゃんになったら、ママはミイラになっちゃうぞ~」
「ちょっとパパ!ミイラはひどくない!?」
「キャハハハッ。ママがミイラになっても、お風呂に入れば元に戻るよきっと!」
…いやいや、そんなインスタントラーメンじゃねーんだから!
もぉなに言っても可愛いなぁ。
しばらくキャーキャー騒いだ後、ゆかりが下を向いてじーっと何かを見ている。
「?」
しばらく様子を見ていると、急に俺を見上げて、
「パパ!見て!」
と言って、自分のぽっこりしたお腹にモミジみたいな手を当てた。
そしておもむろにヘソをつまむ!
すると、風呂上がりでヘソに溜まっていたお湯が、つーっとゆかりのポンポコリンのお腹を伝った。
「おへその涙ー!!」
一瞬あっけに取られたが、俺も、ママも、ゆかりも、おかしくておかしくて、その後ずーっと笑い続けた。
あー。幸せ過ぎて心も体もポカポカだ。
完成しないABCの歌もおへその涙も、宝物。
可愛い、可愛い、俺の宝物。
明日もあさっても、幸せお風呂。
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