消える

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 あれ、ペーパーナイフどこへ置いたっけ?  またモノが無くなった。こういうことが時々起きる。いつも使っているペンとかなら消えたりしない。でも時たましか使わないもの、それが必要になったとき、消えていることに気が付く。書類をまとめて認めを押すときの印肉だったり、改まった手紙を書く際の筆ペンだったり。買った記憶はあるのに、引き出しの中には見あたらない。  またかぁ、イヤだなぁ……まあいいや  独り言を言って、多佳子は机を離れた。そうして、帰宅したなり、脱ぎ散らしてベッドの上に放り出していたジャケットをスエットの上に引っかけて部屋を出た。  マンションの1階にはコンビニが入っている。モノが消えたときには、けっこう重宝している。見あたらなくなったからといって、すぐに新しいものを買ってしまうのがイケないんだなんて、考えたことはない。消えるのはいくらでも代用がきくものばかりなのだ。だから別に気に留めたりはしていない。原因は机のまわりや部屋が片づいていないことの方が大きい。DVDを見ようかと思って、リモコンが無いやとなることなんかよくあるクチだ。そういうときはリビングのテーブルまわりに散らかっている雑誌やチラシの類をどかしてみる。するとその下から出てきてくれる(出てこないこともあるけど、そのときは見るのをヤメる)。ペーパーナイフだって、印肉だって、部屋の大掃除をすると、きっと2つも3つも出てくるに決まっている。実際、会社ではあれがない、これがないと言ってイライラするようなことはない。人目につく部分だけは退社時に一通り整理するようにしているからだ。会社では起こらないのに、自分の部屋ではよくあるというのなら、その違いに原因があると考えるのが当たり前だ。形だけとはいえ、会社では整理をしているのに対して、マンションの机まわりはそうなっていない、だからよくモノが消える。  多佳子の中では、とおの昔に結論がでていた。
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