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「顔、上げてよ」
「嫌」
「なんで?」
「私メイクもしてないし……」
「は? そんなの別にいいだろ」
「良くない」
彼は私の顔を隠すように流れ落ちている髪を掬い上げた。
「もう知ってるけど、俺」
「やめて」
彼の手を払う。軽く払ったはずなのに、パンという音が響いて自分で驚いた。後悔したけどそれは言えずに顔を背けた。
「女は色々あるの」
「わかんないよ、そんなの」
嫌な空気だ。
酸素が不足してるような、そんな息苦しさ。それは私のせいなのに、うまく言葉が出て来ない。自分が嫌になる。
「見合い話、どうなってんの?」
「……それも島崎先生に聞いたの?」
「そうだよ。嘘だったの? それがあるから実家に戻ったんじゃないの?」
彼の真剣な目が私を射抜いた。
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