雪に溶ける

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「話があるのは本当。まだ会ってはいないけど」 戻る前からその話はあったし、島崎先生にもそれは話した覚えがある。 彼にそれを話すとは思って無かった。 「会うなよ。絶対行くな」 ガタッと音がして片手を掴まれた。コタツの上の湯のみが軽く揺れた。 「戻って来て。俺にして。結婚を考えるなら、相手は俺だろ?」 真っ直ぐな言葉に眩暈がした。『結婚』なんて言葉、彼にはまだ似合わない。 「私もう、全部引き払ったんだよ」 帰ったって一体なにをすればいいのか。無職の私には、部屋を借りることすら厳しい。すると掴まれた手が緩んで、彼は顔をしかめた。 「それは俺も、だよね……」 『あっ』と思い、彼を見つめた。 そうなんだけど、今の言葉はそうじゃない。 どうして私はいつもこうなの。傷つけなくていい事で、彼を傷つけてしまう。 「違うの。そういう意味じゃなくて。まだ見つけられてないの。教師を辞めてこの先なにが……」 ――違う。 私は途中で言葉を止めた。
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