雪に溶ける

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「なんなんだよ、腹立つな……」 「ごめんね」 「謝んな。狡いんだよ貴女は」 「そうね」 「……ほんとだよ」 目が合って、2人でフッと力を抜くような笑いを浮かべた。それは空気を一気に緩和した。このくすぐったい感覚は何だろう? 彼の左手が伸びてくる。私の右手を取り、握った。彼の手は温かくて大きくて、少し骨ばった手は男性的で。 ただ手を繋いでるだけ。けれどそれが私には、とても甘い行為に感じられた。 「じゃあ続けるのは無理なんて、もう言わないよな?」 「それは……」 「見合い、しないんだろ?」 「しないけど……」 「なんだよ。歯切れ悪いな」 彼の言うことはわかる。好き合っているなら問題ない、そんなシンプルな答え。 けれど日常は全てが繋がっているのだ。だからこそ、簡単に頷いてしまえない。 カチッとコタツから音がして、足元に温かさが増した。 それと同時に彼の溜息も聞こえてきた。
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