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「ごめん。つい焦って……。こんな風に逃げたのは、余程の事なのにな」
違う。
即座に首を横に振る私に、彼は儚い笑いを見せた。それは自嘲してるように見えた。
「話してよ。俺、なんだって聞くから」
年の差があっても、大人ぶっても、私は全然子供で。
そんな中途半端な大人だから、貴方に大人な顔をさせてしまう。大きく深呼吸をして吐き出す。抱えていた気持ちを、少しは上手く伝えられるだろうか。
呼吸を整えて口を開いた。
「貴方が大学生になっても、私はやはり人の目を気にしてたでしょう?」
「うん」
「貴方もそれをわかってくれた」
彼はまだ未成年であり、私が高校教師である事は変わらない。彼も理解をしてくれて、今まで通りにひっそりとした付き合いが続いた。
デートをするなら私の車で県外へ。
それ以外は私の住むアパートで逢瀬を重ねた。
そういう日々を過ごす中、離れた年齢、将来の事。そうした逃れられないものに対して、不安になる気持ちは続いていた。
けれどそれは自分の中で打ち消せるレベルだった。
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