雪に溶ける

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「夏が終わって、秋が訪れた時。私、大学の近くで貴方を見かけたのよ」 数人のグループが固まって歩く中に彼の姿を見つけた。とても楽しそうな様子だった。 彼の腕を軽く叩く女性。ミニスカートが似合う可愛い子。彼女には見覚えがあった。その斜め前に歩く男性も。 それを見た時、私は衝撃を受けた。動けず、ただ見送るしか出来なかった。 「見覚えのある2人……確かに同じ高校だった友人は何人かいる。そいつらの事だよな?」 「ええ」 「隔たりを感じた? それがショックだったの?」 「それはあるけど今更だし、そうじゃないの」 その返答に彼は眉間に皺を寄せた。一時の間を置いて、再び私に尋ねる。 「一緒にいた女性と俺の事、疑ってたりする?」 私は首を横に振って否定した。疑ってはいない。 「本当に?」 「本当よ」 じゃあなんで? そんな彼の声が聞こえてきそうだ。けれど彼はなにも言わず、自分の思考の中に入り込んでるようだった。
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