雪に溶ける

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私は話を止め、彼を様子見る。すると彼は申し訳無さそうに呟いた。 「……ごめん、わかってやれなくて」 その優しすぎる台詞に思わず胸を掴まれ、首を横に振った。 「わからなくて当たり前よ。あの時、教師の立場を改めて突きつけられた気がしたの」 些細な事だと笑われるような出来事だ。けれど私は彼と私の立場を、あの場面で再確認してしまった。 私が2人を覚えてたのは、男性の方は彼のクラスメイトで、彼を見かけた時に良く一緒にいた子だったから。 そして彼女の方は、部活動に励む彼の姿を良く見ていた女の子達の1人で間違いない。 堂々と声援を向ける姿を羨ましく眺めていた私には、彼女が誰を見つめているのかわかってた。 でもそれは彼に言うべきじゃない。 「少し、嫉妬したの。でもだからって駆け寄ったら、きっと真っ先に2人は『先生』って私に言うのよ」 彼が卒業したとしても、私は教師のままなのは当たり前の話で。 私だってそうだ。この先年齢を幾ら重ねても、自分が通ってた学校の先生は、変わらず先生のまま。
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