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「……なに、してるんですか」
「雪を、見てて……」
「寒いのに……」
サクッとまた音が響いた。私との距離が縮んでいく、音。
その距離が縮まるのと呼応するように、私の心音も増していく。
少しぶりの彼は特に変わらない、いつも通りの彼で。
少し長めの彼の前髪にも雪が降り積もっていた。それがわかる程近付いた距離。
真っ直ぐ落ちて来た雪は、彼のダウンへ止まる事が出来ず、スルリと流れ落ちる。
彼の鼻の頭が赤くなってる。
かわいい……浮かんだ感情が私の緊張を少しだけ緩め、笑みが零れる。こんな時に笑えてるだなんて自分が信じられない。
彼はまたサクッと音を立てて近付いてくる。不機嫌そうな顔をして。
「なに笑ってるんですか」
「鼻の頭、赤くなってる」
「……煩いなぁ」
そう言いながら彼は、手で鼻を隠すように覆った。
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