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「こんな時まで大人な顔、しないで下さい」
そう言うと彼は、顔を横に逸らした。子供扱いしたわけじゃないけど、こんな風に拗ねる姿は子供みたいだ。
逸らした視線の先はなにを見てるんだろう。彼の綺麗な横顔を見つめる。
一方的な別れのメールだけ送信し、私は彼の前から姿を消した。仕事も辞め、アパートも引き払って。
それから3週間。
もう逢えないと思ってた彼が目の前にいる。
「こんな田舎まで……どうして場所がわかったの?」
「島崎先生に聞いたんですよ。ラーメン驕らされましたけどね」
「……安いなぁ、私の情報」
島崎先生は私の同僚で、教職についてから同じ悩みを分かち合える親友でもあった。
彼女自身は私の実家の住所なんか知らないから、共通の友人に頼んで調べたとしか思えない。なぜ調べて迄彼に教えようと思ったんだろう。
『本当に子供なのは、どっちなんだか』
彼女に言われた言葉を、なぜか今、思い出した。
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