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彼から吐かれる吐息の白さに目がくらむ。
それは糸のようになって、私の体を縛りつけてはいないだろうか。
目が離せない。
掴まれた手首に力が入ってて痛い。彼の熱で溶けてしまいそうだ。
「もう、続けるのは無理かなって……だから……」
うまく言葉が出て来ない。吐きだした言葉にも彼は反応しなかった。ただ真っ直ぐにその透明な瞳に私を映してる。
「離、して」
言いながら視線を下へと逸らす。本音を言えない、臆病者の自分を見透かされるのが怖かった。
追いかけてくれる人だって知ってた。でもきっと、諦めてしまうだろうとも思ってた。そうしてもおかしく無い程、私は痕跡を消した。
――――でも、少しだけ。
視線の先には掴まれたままの手首。彼の手の甲に雪が落ちて、溶けた。
「わけわかんないよ」
「…………」
「卒業して、やっと教師と生徒では無くなれてさ。順調だって思ってたよ俺は」
「…………」
「下向いてないで答えてよ。俺がまだ学生だから? こんなガキ、嫌になった?」
彼の問いかけに何一つ答えられないまま、私は顔すら上げれない。
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