雪に溶ける

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その後、私は彼を自宅の自分の部屋へ上がらせた。 思わぬ訪問に母は驚いていたが、それよりも彼の方が緊張した面持ちだった。 私がアパートから持って帰った小さなコタツに2人で入る。 「聞かせてよ」 彼の言葉に促される。 彼の目が、私を捉えてる。 私は高校教師だった。 高校生と知らずにバイト先の彼を好きになり、自分の勤務する学校の生徒だと知った時にはもう気持ちは動いてしまっていた。思いとどまれなかった。 私達は秘密裏に付き合った。 私の受け持ちは違う学年だった。 そのせいで学校での接触は殆ど無かった。偶然すれ違ったり、グラウンドにいる彼の姿を見かける程度。 彼も私の立場を考えてくれる人だった。だから隠すのは難しい事では無かった。
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