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「最初に、指をコップを持つ時のような形にして、その手で太陽を下から掬うように腕をのばちてみてよ」
「こうか?」
片手で元気玉を分けてもらうような格好で、指だけはU字型にしてそこに太陽を乗っける。
「遅い!」
「えっ?」
「もっと素早く!」
「こうか?」
なんか戦隊ヒーローの変身や必殺技のポーズみたいだ。
「遅い!!いい?いち、にー、ちゃん!!で素早く、力強くやって」
「あ、あぁ」
「はい!いち、にー、ちゃん!!」
肩が外れるくらいの勢いで、さらに力を込めて腕を太陽に伸ばす。
「まあまあだね。ちょれ、忘れないで」
「わかった」
「ぢゃー次」
「えっ?」
「つーぎ!どうちぇ早く帰宅ちて、やることないんでちょ?」
「ま、まぁな」
「次はね、上げた手。右手を上げたからそのまま左の方へ引くの」
始めてさ行のない指示だった。
てか、指示?誰も師事してとは言っていない。
高度なオヤジギャグじゃない。
「あの、これは…」
「ちーー!」
しーっなのか、鼠が怒った時の鳴き声なのかわからない。
「やるの!早く!」
「わかったよ」
「いち、にー」
「あ、最初から?」
「ちょうだよ。右腕をおろちて、一気に太陽を掬って、その太陽を左の肩に引き寄ちぇる!さあ、いち、にー、ちゃん!」
右腕で素早く力強く太陽を掬い、一気に左肩へ引き寄せる。
「どうだ?」
「いいね!君は飲み込みが早い」
掌に乗りそうな虹色鼠に君呼ばわりされたものの、なぜだろう、従わなければいけないと思わせる威厳がそのピクピク動く髭から満ち溢れて来ているような気がした。
「ありがとうございます」
素直にそう言うしかなかった。
「ぢゃぁ、次ね」
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