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「おっさん?」
佐野がしかめっ面になる。
――情報が多すぎて、混乱します~。
里香が言葉を継げずにいると、さらに。
「パパー」
その後ろから、座敷童のような髪型の女の子が走り出てきて、佐野の足にからみついた。
「園子、お客さんが来てるから、遊ぶのはあとで」
――妖怪ファミリー! そうじゃなく! 佐野ファミリー!
そこで里香はやっと状況を理解する。佐野と史子と子供を前にして、分からないはずがない。しかし、事情を呑み込むと、今度は、心の中にもやもやが広がっていく。
「ご自宅まで失礼たいしました。そうそう、産屋敷さんから結婚式の招待状預かってます。それから、お見舞いの品です、失礼いたします」
里香はデパートの紙袋を佐野に押し付けると、急いでオンボロ階段を駆け下りた。そこで。ふいに。
ぽつり、と雫が頬に触れた。
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