◆花園さんの秘密

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 ――こんな雨の中、どうして私を追ってきたりするんですか?  里香の頭の中に切ないメロディーが流れ始める。印象的なギターリフから始まる、少し前にCMソングとしても使われていたあの曲だ。  『気持ちを告げることできず ただ僕たちは 出会って 別れていく』  サビの歌詞は、里香の胸をきゅっと締め付けた。  するとどうだろう、現実までもドラマチックになる。追ってくる佐野の姿が映画のクライマックスシーンのようにスローモーションに見え……実際は、水たまりをよけるのに、そろそろと歩いているだけだったが。  ――修正が追い付きません……。  そこで、ラブバラードは一旦停止した。しかし。 「新山さん……!」  佐野の目は潤んで揺れていた。大きく肩を揺らし、息苦しそうな呼吸。熱を帯びたその表情に、里香の内なるボルテージも上がっていく。 「佐野さん、私……」  そして、あろうことか。  佐野が里香の手を自らの手で包み込んだ。  ――あたたかい、です……。
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