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着替えは妻が用意してくれると言うので、すぐに二人で脱衣所に入る。
ついこの間までシャツ一枚、自分では脱ぎ着できなかった陽斗だが、慶太が目を離した隙に、一人で裸になり、風呂場へ入っていった。慌てて、慶太も服を脱いで、後を追う。
当然のように慶太が湯をかけてやろうとすると、陽斗に止められた。
「おとうさん、ぼく自分でできるから」
「そうか。でも、今日はお父さんがやってやる」
陽斗を椅子に座らせ、頭を洗う。力いっぱい目を瞑り、耳を塞ぐ姿は愛らしい。
貝原支店にいた当時、慶太は独身だった。高校生のときにアルバイトを始め、社員に採用してくれるというので、そのまま就職した。本部に異動になるまで、実家から通っていた。
結婚したのは、本部に来てからだ。こちらで産まれた陽斗は、もう一人で着替えもできるし、頭を洗うこともできる。
自分でやると言い張る陽斗をくすぐりながら、体を洗ってやる。どこか強張っていた陽斗が大声で笑い出すと、慶太は秘かに安堵した。
この分なら、妻の言うように大したことではないのだろう。
自分の体もサッと洗い、二人で湯船に浸かる。
陽斗が浴槽にへばりつくように入ったので、慶太は反対側の壁に背をもたせかかった。
「ちゃんと肩まで浸かりなさい」
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